研究課題
敗血症により、心不全、呼吸不全、腎不全、肝不全など多臓器不全が生じる可能があり、その多臓器不全の中でも肝不全に対する対策は治療を行う上でも極めて重要である。敗血症患者においても、Burgheらの報告で正常血糖状態が多臓器不全の頻度を低下させることから考えて、我われが報告してきた糖尿病と同じく、骨髄細胞よりの異常な細胞の各臓器細胞への融合が多臓器不全り発症に関連しているとの仮説を我々は立ててみた。すなわち敗血症において、肝臓での骨髄細胞からの異常なインスリン産生細胞の発現の有無と肝不全発症との関連について検討する。そのためにLPSを用いて敗血症モデルマウスを作製する必要がある。現在敗血症モデルとしてのマウスを作製するのに適したLPSの投与量を確立するための基礎検討を行った。体重の軽いマウスではすぐに死亡するか逆に長く生存し、適切なLPSの投与量を決めることが困難であった。そのため、炎症性サイトカインであるTNFを抑える薬剤を投与することで適切なLPSの投与量を調べてみることとした。結果は興味深いことに、LPS単独で投与したマウス群とLPSを投与したのち抗TNF作用の薬剤を投与したマウス群では、LPS単独投与したマウス群が生存している場合でも抗TNF作用の薬剤を投与すると死亡することが分かった。このことから敗血症状態での炎症性サイカインはある時期生体防御反応において必要不可欠である可能性が考えられ、今後さらなる検討が必要であると考えられた。また肝不全と関連がある腸管機能において、敗血症で引き起こされる高血糖との関連を調べたところ、高血糖である糖尿病での小腸では、骨髄由来のCajal細胞との融合が減少していることを発見し雑誌に報告した。
すべて 2011
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J Gastroen Hepatol
巻: 26 ページ: 1072-1078
doi:10.1111/j.1440-1746.2011.06670.x