急性腎障害(AKI)の早期予後予測に有用な尿中バイオマーカーの確立に向けた予備研究として、既報の尿中バイオマーカーの一つである尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)と急性腎障害の関連を検討した。 まず検討(1)として、山口大学病院高度救命救急センターに緊急入院した救急患者連続40例について、入院時の尿検体を用いてL-FABPをELISA法にて測定した。40例中15例においてAKINによる診断基準でAKIと診断された。尿中L-FABPはAKI発症群(15例)では37.7ng/mL(中央値)に対して、非発症群(25例)では5.4ng/mL(中央値)であった(p=0.0641)。統計学的に有意ではなかったが、AKI発症群で尿中L-FABPが高い傾向にあった。 次に検討(2)として、急性腎障害の原因となる横紋筋融解症を合併した救急患者(7例)について、尿中L-FABPを経時的に測定した。尿中L-FABPが著しく高値(>100ng/mL)を示した症例も存在したが、集中治療管理によって腎障害を発症した症例は認めなかった。尿中L-FABPの経時的変化には一定の傾向を認めず、尿中L-FABPの初期値や経時的推移から腎障害の予後予測を行うことは困難と考えられた。 さらに本研究として、プロテオーム解析を行うための尿検体の収集を継続した。 救急患者に合併する急性腎障害の予後予測のためには、既報の尿中バイオマーカーでは限界があると推定され、新たな尿中バイオマーカーの確立が望まれる。
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