研究概要 |
重症救急患者に合併する急性腎障害(AKI)の早期発見に対する尿中バイオマーカーの有用性を検討するために、当院高度救命救急センターに緊急入院した患者(40例)を対象に、入院時の随時尿で尿中L-FABP(liver-type fatty acid binding protein)およびNGAL(neutrophi gelatinasel-associated lipocalin)の測定を行い、AKI発症の有無と尿中バイオマーカーの関連を検討した。 【結果】対象患者40例中15例(38%)にAKIの発症を認めた。AKIの誘因としては、急性循環不全9例、高ミオグロビン血症2例、その他4例であった。AKI合併の有無での比較では、尿中L-FABPには有意差を認めず(中央値37.6ng/mL vs 5.4ng/mL,p=0.06)、尿中NGALはAKI発症群で有意に高値であった(中央値28.5ng/mL vs 1.2ng/mL,p=0.01)。ROC分析ではAKI発症に対するNGALのカットオフ値は8.5ng/mLであった(感度67%、特異度80%)。 【結論】重症救急患者には急性腎障害を合併する頻度が比較的高く、その早期診断には尿中L-FABPよりも尿中NGALの有用性が高いと考えられた。さらに、新たな尿中バイオマーカーの確立に向けて尿プロテオーム解析の準備を進めた。
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