研究目的:急性肺傷害は肺胞上皮や肺毛細血管の傷害を契機に高度の炎症反応が進展し、高度の低酸素血症をきたす予後不良の病態である。Vascular endothelial growth factor(VEGF)は肺傷害時に分泌され、肺毛細血管の透過性亢進に関与している。VEGFのレセプターの細胞外ドメインのみをコードする遺伝子を肺内に発現させて、VEGFの作用をdominant negative様式に抑制することによって、肺傷害後の急性炎症をコントロールすることの意義について検討することが本研究の目的である。 22年度研究実施概要:肺毛細血管透過性の亢進した肺傷害動物モデルとして、直接的肺損傷でなく、腸管栄養動脈阻血再還流後の二次的肺傷害モデルを検討していた。前年度は、盲腸流入血管の阻血再還流後の肺傷害モデルを検討したが、肺の障害が軽微であり、治療効果の有無がはっきり確認できなかった。以前上腸間膜動脈の阻血再還流モデルを試みたが、手術中の死亡率が高く、うまくいかなかった。他者の論文ではこの方法が比較的多く行われており、論文著者に直接手術方法を教授してもらった。阻血45分、再還流6時間で、肺の浮腫を確認した。今後ウイルスベクターによるVEGFレセプター細胞外ドメインの発現が肺浮腫を軽減する効果が認められるか否か検討する。検証方法として、これまで予備実験で行ってきた方法を用いる。具体的には、肺血管透過性の評価として、肺乾湿重量比、エバンスブルーアッセイを行う。二次的な炎症反応を抑制しているか否かの評価として、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)アッセイ、炎症性サイトカインの定量、接着因子の定量等を行う。
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