研究概要 |
【背景】高温環境への暴露は、血管内皮細胞傷害と関係する重要な因子であると考えられる。特に熱中症では、血管内皮細胞傷害による多臓器不全(MOF)の進展が転帰を左右する。前年度までは、高温環境(39,40℃)では、血管内皮細胞でのinterleukin(IL)-8 mRNAは早期から有意に発現(p<0.01)するが、逆にIL-8産生は温度依存性に抑制(p<0.01)されることを明らかにした。本研究では、血管内皮細胞における高温環境でのサイトカイン産生能の経時的変化を明らかにすることを目的とした。 【方法】:ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells;HUVECs)を各種温度環境(37,38,39,40℃)で1時間培養した後、23時間37℃培養し、上清中のIL-8とIL-8mRNAをそれぞれenzyme-linked immunoabsorbent assay(ELISA)、TaqMan[○!R] real-time RT-PCRを用いて測定した。 【結果】:同条件の温度で培養したHUVECsをtrypan blueを用いて、温度変化による形態学的な細胞のviabilityに差は認められなかった。1時間40℃刺激後37℃に戻し23時間培養すると、mRNAは、持続高値(p<0.01)を示し、温度依存性に低下したIL-8も有意に増加(p<0.O1)した。 【考察】:IL産生能は高温環境で温度依存性に低下する。しかし、一定の閾値を超えた高温刺激(40℃)はmRNAの長期発現をもたらし、IL抑制後の有意なIL産生(rebound effect)をきたす。熱中症患者のMOFの進展には、高温刺激後に認められるIL産生抑制後の再上昇が関係している可能性がある。
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