哺乳類における代表的な血清カルシウム濃度調節ホルモンとしてカルシトニン、副甲状腺ホルモン、そして活性型ビタミンD3が知られており、これら3つのホルモンは、哺乳類の生体内において骨を吸収する多核の細胞である破骨細胞の吸収活性と密接な関係をもつことが報告されている。系統発生学的にビタミンD3は硬骨魚類から出現するため、硬骨魚類では古い破骨細胞像が見られる可能性が考えられる。本研究は硬骨魚類の破骨細胞を形成する培養系を確立し、破骨細胞の分化制御機構の起源と進化を解明しようとするものである。 申請した研究計画調書に従い、平成23年度はメダカ咽頭骨より分離した破骨細胞を長期間培養できる方法の確立を目指した。研究実績は以下のとおりである。 (1)分離した破骨細胞を長期間培養できる実験系の確立:分離した破骨細胞を72時間培養できる実験を確立し、これら破骨細胞は多核でTRAP陽性を示した。 (2)この培養系を用いた破骨細胞の吸収活性の調査:分離した破骨細胞をクジラ象牙質片上で培養し走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、破骨細胞周囲には明瞭な吸収窩の形成は見られなかったが、象牙質表面が酸処理されたような構造が観察された。これら培養破骨細胞を透過型電子顕微鏡TEMで観察したが、微細構造的には哺乳類の破骨細胞と同一であった。 以上の研究から、これまで確立されていなかった硬骨魚類の破骨細胞を分離培養が可能となり、破骨細胞の分化制御因子の進化と起源の解明のための実験系が確立した。
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