基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンが星状網形成にどのように関与しているかを明らかにすることを目的に、今年度は正常マウスならびにパールカン上皮細胞過剰発現系トランスジェニック(Tg)マウスを用いて、臼歯歯胚組織の星状網形成からエナメル器退縮までの全過程において、パールカン関連シグナル分子(FGF-TGF-β1・VEGF・heparanase)およびパールカン受容体(dystroglycan、integrin-β1)の経時的局在について免疫組織化学的検索、in situ hybridization法ならびにRT-PCR法にて検索した。その結果、星状網の形成とともにパールカンが星状網細胞間隙に局在しはじめると同時に、星状網細胞はパールカン受容体(dystroglycan)を発現し、FGF・TGF-β1・VEGFも細胞間隙に沈着していた。胎生期後期のエナメル器内への血管侵入の時期にはそれら増殖因子の発現が強調されていた。次いで、出生後のエナメル器退縮過程では、星状網細胞によるヘパラナーゼ産生が亢進し、パールカン合成の停止・糖鎖の切断が生じ、増殖因子も血管周囲のみに限局してエナメル器の容積の急激な減少をもたらしていた。Tgマウスでは、星状網におけるパールカンの過剰発現により、胎生期後期でパールカン関連増殖因子ならびにパールカン受容体の発現亢進が確認され、エナメル器の膨張と星状網細胞間隙の拡大がみとめられた。したがって、歯胚エナメル器におけるパールカンの局在ならびにパールカン関連シグナル分子の細胞間隙への沈着が星状網形成ならびに血管侵入に始まるエナメル器退縮の制御に重要であることがあきらかになりつつある。
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