基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンがエナメル器形成にどのように関与しているかを明らかにすることを目的に、今年度は正常マウスおよびパールカンノックアウト(KO)マウスを用いて、臼歯歯胚組織の各発育段階において、歯胚形態の変化およびパールカン関連分子(FGF-2・fibronectin・tenascin・heparanase・heparan sulfate)、パールカン受容体(dystroglycan、integrin-ss1)、基底膜分子(laminin・collagen type IV)ならびにエナメル器細胞の分化マーカー(amelogenin・ameloblastin)の経時的局在について免疫組織化学的ならびにin situ hybridization法をもちいて検索した。その結果、パールカンKOマウス臼歯歯胚は正常同腹マウスの歯胚と比較して小さく、エナメル器細胞の発育分化の不良が確認された。免疫組織化学的には、胎生18日齢の正常マウスではエナメル芽細胞分化マーカーであるamelogeninならびにameloblastinの発現が認められるものの、パールカンKOマウスではそれらの発現がみられず、さらに中間層細胞の分化も確認されなかった。パールカン以外の基底膜分子の局在変化は認められなかった。したがって、パールカンはエナメル器細胞の増殖ならびに分化過程に重要な役割を担っていることが示唆された。前年度までのパールカントランスジェニックマウスでの結果と合わせ、歯胚エナメル器におけるパールカンの局在ならびにパールカン関連シグナル分子の細胞間隙への沈着が、エナメル器の形態形成に重要であることがあきらかになりつつある。
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