研究概要 |
基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンがエナメル器形成にどのように関与しているかを明らかにすることを目的に、今年度はマウスエナメル器細胞のcell lineを用いて、パールカンと星状網細胞分化についてin vitro系にて検索した。さらに、マウス歯胚器官培養系にて、アンチセンス法によりパールカン遺伝子発現を制御し、歯胚発育変化について組織学的に解析した。エナメル器細胞培養実験では、通常dishおよびパールカン含有マトリゲル上にて培養後、細胞骨格(サイトケラチン14、ファロイジン)、パールカン受容体(α-dystroglycan、integrin-β1)、ならびにエナメル器細胞の分化マーカー(ALP, amelogenin, ameloblastin)の発現変化について、蛍光抗体法にて観察した。その結果、マトリゲル上ではエナメル器上皮細胞は細胞骨格が放射状に走行する紡錘形の星状網細胞様に変化し、細胞表面にはパールカン受容体(α-dystroglycan)の発現を伴っており、in vivoでの星状網細胞の染色結果が反映されていた。従って、細胞外のパールカンが星状網細胞分化に重要であることが証明された。さらに、器官培養実験では、パールカンアンチセンスDNAをオリゴフェクトアミン試薬を用いて、胎生13日齢臼歯歯胚に遺伝子導入し、7日間培養した。その結果、エナメル器の形成は認められたものの、エナメル器内での細胞分化が悪く、さらに、歯乳頭細胞の細胞密度も低下していた。したがって、パールカンはエナメル器細胞分化に重要な役割を果たしていることが示された。前年度までのパールカントランスジェニックマウスおよびパールカンノックアウトマウスでの結果と合わせ、歯胚エナメル器におけるパールカンの局在ならびにパールカン関連シグナル分子の細胞間隙への沈着が、エナメル器の形態形成に重要であることが初めて証明された。
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