歯根周囲に存在する歯槽骨は、歯根膜が埋入された特殊な骨組織で固有歯槽骨とよばれている。組織像からその形成過程は、Sharpey線維の合成とその石灰化が起こることが予測されるが、どのように形成されているのかについては不明な点が多い。我々はラット歯根の発生過程を観察することにより、歯根表層歯周組織にAQP1陽性細胞が存在することを確認し、発生学的、および形態学的な検索によりセメント芽細胞であることを明らかにした。その実験の過程で、歯槽骨の発生過程において、固有歯槽骨の発生時期に一致してAQP1陽性細胞が歯槽骨上に出現することを発見した。この細胞は、生体ラベリングおよび、免疫組織化学的検索の結果、硬組織形成能を有し、骨芽細胞分化マーカーを発現していることを確認した。このAQP1陽性細胞は15日齢歯胚周囲の固有歯槽骨形成時期に出現し線維芽細胞様を呈しALP陽性を示していた。18日齢になると歯槽頂部からSharpey線維の形成が見られるようになり、その近傍にはAQP1陽性細胞が観察された。この時期に歯槽骨上には骨芽細胞は観察されなかった。20日齢になると、歯根膜主線維が観察されるようになり、それと同時に骨芽細胞が歯槽骨に埋入される主線維の間に観察されるようになった。また、このAQP1陽性細胞は様々な線維芽細胞マーカーにも陽性を示していた。以上のことより、固有歯槽骨の形成には歯根膜におけるAQP1陽性細胞が歯槽骨に埋入されるSharpey線維を作り、その後骨芽細胞に分化して固有歯槽骨を形成する可能性が示唆された。
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