研究課題/領域番号 |
21592326
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長塚 仁 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70237535)
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研究分担者 |
福島 邦博 岡山大学, 岡山大学病院, 講師 (50284112)
玉村 亮 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00403494)
片瀬 直樹 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30566071)
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キーワード | 口腔癌 / 癌抑制遺伝子 / ING遺伝子ファミリー / 扁平上皮癌 / 機能解析 / p53 / LOH / 遺伝子変異 |
研究概要 |
癌は癌遺伝子および癌抑制遺伝子などの複数の癌関連遺伝子に生じた変異や後成的修飾の結果として生じる。特に癌抑制遺伝子の機能低下ないし欠失は癌の発生に重要であり、癌抑制遺伝子の同定や機能解析は癌の病態解明において重要な意義を要する。本研究の目的は、癌抑制遺伝子と考えられているING遺伝子ファミリーの機能解析と遺伝子ネットワークの解明である。これにより、口腔癌の再発や転移に関わる因子を明らかにし、口腔癌に対する分子標的治療の基礎を構築することが期待される。 最終年度となる平成23年度は、ING遺伝子ファミリーの機能や遺伝子ネットワークを解析し、その治療へのフィードバックの可能性を詳細に検討した。 これまでの研究からは、ING遺伝子ファミリーを含む領域にヘテロ接合性消失(Loss of Heterozygosity : LOH)を生じて遺伝子の機能低下を来している患者群は、より進行した病期(ステージ)にあることが指摘されているほか、口腔癌ではING5のLZL fingerやNCRdomainにmutationが生じた結果、遺伝子の機能低下が生じる可能性が指摘されている。今回、ING遺伝子ファミリー間の相互作用やTP53のmutationを検討することで、これらの遺伝子ファミリーは協調して機能し、p53依存性または非依存性に転写制御やアポトーシス、細胞周期を調節していることが明らかとなった。この知見はこれまでに得られているp53 mutation statusとLOHの関係とも合致していた。さらに、ING遺伝子ファミリーの異常が良性腫瘍でも認められるかについても検討した。代表的な歯原性腫瘍であるエナメル上皮腫38例においてLOHの状態と臨床データの相関を検討した結果、興味深いことに、ING1-5の全てがエナメル上皮腫においても33.3-72.2%と非常に高頻度にLOHを示しており、ING遺伝子ファミリーの異常は良性腫瘍の段階でも生じており、局所浸潤性に貢献する可能性が示唆された。 以上から、ING遺伝子ファミリーの異常が口腔癌において特に重要な機能を有する癌抑制遺伝子であることが示され、口腔癌以外の腫瘍でも高頻度に発生していることからも、分子標的治療のターゲットとして重要である可能性が示唆された。
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