研究概要 |
PKRはインターフェロンや2本鎖RNA等の細胞外ストレスに応答し活性化される蛋白質リン酸化酵素であり,細胞の増殖や分化,アポトーシス,抗腫瘍作用等の広範囲な生命現象に関与する。我々は,触媒ドメインを変異したPKR(K296R)のcDNAをマウス及びヒト骨芽細胞に導入し,定常に発現しているPKR変異細胞株を樹立し,蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤であるオカダ酸(OA)とカリクリンA(CA)が両細胞にアポトーシスを誘導することを報告した。オカダ酸は変異細胞でIκBαのチロシン残基のリン酸化を促進することを報告した。また,骨芽細胞の石灰化にPKRが必須であり,その石灰化調節経路に転写因子STAT1やRunx2が関与することを発見した(Yoshida et al, 2009)。蛋白新生の阻害下で,OAとCAは処理後2時間でIκBの分解を促進したが,TNF-αは15分から30分でIκBを分解した。また,IκBの発現はOAとCAの濃度および時間に依存して増加したが,変異細胞における発現量は著しく減少していた。以上の結果より,OAとCAはTNF-αと異なる機構によりアポトーシスを誘導すること,PKRはIκBの発現を介してアポトーシスを誘導することが明らかとなった。Calcineurin(CnA)は遺伝子欠質マウスの解析から骨代謝における重要性が明らかになってきたが,詳細な機構は分かっていない。Flag結合したOsterixを細胞内に導入し免疫沈降を行うと,OsterixとCnAが共沈した。また,リコンビナントCnAはOsterix蛋白質のリン酸化を抑制した。この所見は、CnAはOsterixと結合し,Osterix蛋白質を脱リン酸化することを意味する(okamura et al, 2009)。
|