研究概要 |
シスタチンCは、分子量11kDaの非糖鎖性の一本鎖のポリペプチドで、タンパク分解酵素であるシステインプロテアーゼインヒビターの一種として知られている。細胞外に分泌されるシスタチンCは、唾液や乳汁・尿・脳脊髄液にも多く含まれている。近年、シスタチンCがES細胞から神経幹細胞への分化を促進することや、海馬の細胞の増殖因子として働くとの報告もある。骨については、シスタチンCが破骨細胞の骨吸収能を抑制することや、破骨細胞の分化を抑制すること、骨芽細胞様細胞のMC3T3-E1細胞において培養中期と後期でシスタチンCのmRNAが上昇することが報告されている。そこでシスタチンCの作用機序を知ることを目的として結合タンパクの探索を行い、候補タンパクとして得られたS100Bとの相互作用を検索した。培養骨芽細胞あるいは間葉系幹細胞へのシスタチンC添加により、骨形成マーカーの変化を定量PCRにより検索し、Runx2(runt-related gene2), beta-catenin,アルカリフォスファターゼ,などの発現が上昇していることが確認された。またシスタチンCとS100BのGST融合蛋白を作製し、相互作用を検索した。GST-pull down assayによりシスタチンCとS100Bの相互作用がマウスの脳および骨組織において確認された。骨組織のおけるS100B蛋白の発現は脳組織に比較すると少ないことやシスタチンCに結合する蛋白が他にもあることから、S100B蛋白へ結合しているシスタチンCは容易に同定できたが、シスタチンCに結合するS100Bを同定するのは困難であった。S100Bがカルシウム結合蛋白であることから、相互作用におけるカルシウムなど2価イオンの存在の影響を比較した。そして、pull down assayにおいて、その結合にカルシウムの存在が必要であることが示唆された。
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