研究概要 |
我々は、骨芽細胞の分化に必須の転写因子であるRunx2が歯牙において象牙質を形成する象牙芽細胞に発現すると、それを骨芽細胞様の細胞に形質転換して骨様象牙質を形成することをトランスジェニック(Tg)(Colla1-Runx2)マウスを用いた研究から明らかにした。Tgマウスの象牙質は、う蝕・咬耗・磨耗等の刺激により形成される第三象牙質の特徴を有することから、本研究は第三象牙質形成におけるRunx2の関連性を解明することを目的としており、組織細胞学的に解析を行っている。ヒトの歯については、矯正治療による抜去歯を健常な歯の対照として用い、齲蝕や破折、および歯周炎により抜歯した歯について解析するために、これまでに第3大臼歯を中心に、臼歯、犬歯、切歯合わせて182本の抜去歯をサンプリングし、組織標本を作製した。そして、形成されている第二,第三象牙質を象牙細管の有無、走行の乱れ、基質に埋入する細胞の有無等により分類してRunx2、象牙芽細胞マーカー(Nestin,DSPP)および各種硬組織基質タンパク質(osteopontin,osteocalcin,DMP1)の免疫組織化学により比較検討した。マウスについても、加齢とともに形成される第二象牙質と実験的に歯牙表面を摩耗させた臼歯の象牙質を同様に比較解析した。その結果、第二象牙質の象牙芽細胞と基質の性状は原生象牙質に類似していたが、骨様の第三象牙質の多くはRunx2-Tgマウスと同様な性状を示し、すなわち、第三象牙質形成におけるRunx2の重要性が示唆された。
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