研究概要 |
本年度は、味細胞と味神経との間で行われている選択的なシナプス形成機序の解明を目的として、味細胞の細胞膜に発現しているカドヘリンスーパーファミリーをはじめとした接着分子の探索を行った。味蕾を含まない舌上皮と味蕾を含む有郭乳頭上皮間で、カドヘリンファミリーの発現の違いを検索してきた。その結果有郭乳頭上皮には舌上皮に発現が認められるP-,E-カドヘリンに加えて、N-,R-,OB-カドヘリンの発現が認められた。これらのカドヘリンの味蕾における発現をin situ Hybridizationで検索すると、それぞれのカドヘリンは味蕾の中で1部の細胞にのみに発現が認められた。特にN-カドヘリンは、味蕾細胞のマーカーとの2重染色から、II型細胞のマーカーのgustducinとと局在が一致していて、味蕾内で甘味・うま味・苦味の受容に関連している細胞での発現が示唆された。さらにSAGE法により有郭乳頭味蕾においてカドヘリン24(CDH24)の発現が認められ、CDH24はIII型細胞のマーカーのマーカーのAADC,GAD67との局在が一致していた。また、カドヘリンファミリー以外の膜表面分子ではシナプス形成に関与しているニューレキシン1の発現がRT-PCRより味蕾での発現が認められた。in situ Hybridizationを用いて味蕾でのニューレキシン1の発現を検索すると、味蕾の1部の細胞での発現が確認され、マーカーとの2重染色でAADCなどのIII型細胞のマーカーとニューレキシン1との局在が一致した。III型細胞は酸味・塩味の受容に関係する細胞で、これらの味物質に応答する味細胞の膜表面分子としてニューレキシン1が発現していることがわかった。 現在、初代培養舌上皮細胞にN-カドヘリン、CDH24を強制発現させて、舌咽神経細胞との共培養により、神経細胞と舌上皮との間に神経回路が形成されるどうかを検索中である。
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