研究概要 |
【目的】脂質異常症と骨粗鬆症との関連性が報告されているが、その分子機構には不明な点が多い。本研究は、cholesterolが破骨細胞の分化に及ぼす影響を、LDL receptor欠損(KO)マウスを用いて検討した。【結果】In vitroにおいて、RANKLで誘導されるマウス骨髄細胞からの破骨細胞形成は、LDLを除去した血清中で、正常血清中と比べ有意に抑制された。この抑制は、培地にLDLもしくは酸化LDL(ox-LDL)を添加することにより相加的に回復した。LDLとox-LDLの受容体であるLDLRとscavenger receptor classAは、破骨細胞の分化過程で恒常的かつRANKL非依存的に発現した。LDLR-KOマウス骨髄細胞由来の破骨細胞形成は、野生型と比較して形成が遅延し、形成される破骨細胞は小型であった。RANKLによるErkとAktの活性化、また、c-fos,NFATc1,TRAPとcathepsin Kの発現は、野生型とKOマウスの細胞間で差がなかった。一方、細胞融合した単核の前破骨細胞の数を表すfusion indexは、KO群で野生型群の約20%であり、前者における細胞融合障害が示された。しかし、細胞融合タンパク質であるAtp6v0d2とDC-STAMPのmRNA発現は、両マウス間で差がなかった。一方、細胞膜とcholesterol-richなlipid raft中のAtp6v0d2量は、KOの破骨細胞で有意に減少した。さらに、骨形態計測から、KOマウスの大腿骨は野生型に比べ、骨量と骨梁数が有意に増加した。しかし、caveolin-1-KOマウスに関しては、破骨細胞形成に変化は見られなかった。【考察】破骨細胞分化は細胞外cholesterolに強く依存することが明らかとなった。その機構として、細胞内cholesterol減少によるAtp6v0d2の細胞膜へのtraffickingが障害され、破骨細胞の細胞融合が減少することが示唆された。
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