研究概要 |
未だマクロファージ(Mφ)の分化、機能については議論の的となっており、統一された見解はない。歯髄内において常在性Mφの存在はよく知られているが、その場で増殖・分化するか、或いは血流を介して供給されるかは不明である。本研究では、正常ICRマウスの発生過程における歯髄内常在性Mφの増殖・分化について、in vivoおよび、血流を完全に遮断した器官培養系(in vitro)を用いて解析を行った。in vivoでは生後0日から生後5日、in vitroは胎生16日下顎第一臼歯歯胚を摘出し14日まで培養を行った。さらに、増殖・分化因子の影響を調べるためM-CSF中和抗体を用いた器官培養も行い、4%パラホルムアルデヒド固定、EDTA脱灰後、凍結包埋を行った。各々の試料は、H-E染色、Mφ抗体であるF4/80、CD68を用いて免疫組織染色を行った。また、in vivoおよび、培養歯胚より実体顕微鏡下で歯乳頭、あるいは歯髄を分離し、Mφの増殖・分化に関する因子の検出のためM-CSFやGM-CSF等のmRNA発現をRT-PCRを用いて検索した。 歯髄内のF4/80+、CD68+Mφ数はin vivoとin vitroで経日的に増加し、両者とも類似した成長曲線を示した。RT-PCR分析では、両者でGM-,G-CSFmRNAの発現は弱かったものの、それぞれの歯乳頭、歯髄よりGM-,G-,M-CSFのmRNA発現が認められた。M-CSFmRNAは最も強く恒常的な発現を示した。M-CSF中和抗体を用いた器官培養系においては歯髄内常在性Mφの増殖抑制を示した。M-CSFは、歯髄常在性マクロファージの発現に対する可能性が高い分子である可能性がある。そして、血清因子は、直接常在性マクロファージの発現に作用する可能性はない。これらの結果より、歯髄常在性Mφは歯髄内で増殖・分化することが示唆された。
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