研究概要 |
本研究では、顎顔面領域の癒合現象における突起先端上皮細胞(MEE細胞)の役割・運命に関連して、組織形態学的な表現型解析とその背景をなす分子間ネットワークを調べるとともに、器官培養系での遺伝子ノックダウンによる表現型異常と細胞動態への影響を明らかにする。前年度までにマウス胎仔下顎突起および二次口蓋突起の癒合部位を対象としたDNAマイクロアレイ解析により発生時期特異的な発現変動を示す遺伝子群の抽出を完了した。本年度では、得られた発現プロファイルに基づいた分子ネットワーク解析を実施し、下顎突起癒合におけるWnt,Hedgehog,Bmpシグナル系の発現変化を見出した。特に下顎突起癒合時(胎生9.5~10.5日)ではIGFファミリ-分子の発現が高まるとともに、筋分化を示すマーカー遺伝子群(MyoD,Myf5,Myogenin)の急激な発現変動を捉えており、これに一致して発現上昇を示す8個の転写因子も同定した。In silicoでのパスウェイ解析によって、これらの転写因子が筋分化マスター遺伝子の上流に働くことを突き止めた。二次口蓋突起では、TGFβ、レチノイン酸シグナル系が高い発現変動を示し、接着期において発現変動するCask分子については、MEE細胞におけるマイクロダイセクション・リアルタイムPCR法での発現検証と、CaskタンパクおよびF11rなどの複合体関連分子について蛍光免疫染色による口蓋突起での局在を確かめた。これまでの研究課題において集積した口蓋裂を表現型とする遺伝子変異マウス試料(TGFβ3,Endothelin-1,δEF1)については、免疫染色試料の組織立体構築をすることにより、野生型と変異型での顎顔面構造の解析が可能となる立体画像データベースを整備した。これらの研究成果については、関連学会で発表、Web公開している。
|