Actinobacillus(Aggregatibacter)actinomycetemcomitansは細胞膜結合性のペルオキシダーゼを産生する。このペルオキシダーゼは報告者らによって精製、クローニングが行われ、詳細な生化学的性質が明らかにされた。この酵素は、ユビキノールー1(還元型ユビキノン-1)を電子供与体として、過酸化水素に電子を渡し、これを環元して水に変えるペルオキシダーゼ活性を有しているので、キノールペルオキシダーゼ(QPO)と命名した。QPOは3個のヘムcを結合した、N末端に一回膜貫通領域を持つ分子量53kDaの単量体タンパクであり、本菌の内膜に結合し、ペリプラズム側に突き出ている構造をしていることが推定された。QPOは呼吸鎖成分のキノンと連結しており、見方を変えると呼吸鎖成分の一部であるとの捉え方もできる。平成21年度は、QPOの阻害剤であるアスコフラノンを生菌に添加すると、病原因子の一つで活性酸素に感受性の高いロイコトキシン(LtxA)の産生量が減少し、複数のタンパクの過酸化が観察されたことから、QPOの生理的役割は過酸化水素を環境から無くすことであり、LtxAとの関連性から考えて歯周病治療のターゲットとなりうることを報告した(インターネットで論文の全文がすでに公開されている)。また、酵素学的な解析のために、リコンビナントQPOの大腸菌での大量産生系と精製系を確立して報告した(論文が雑誌に公表された)。
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