侵襲性歯周炎原因菌Aggregatibacter actinomycetemcomitansは膜結合性キノールペルオキシダーゼ(QPO)を産生する。本酵素は我々が精製、遺伝子のクローニングを行い、生化学的な性質について報告してきた。QPOは2種類の基質のうちユビキノール-1(Q1H2;ユビキノン-1(Q1)の還元型)を酸化し、もう一方の基質である過酸化水素(H2O2)を還元して水とする活性を有し、呼吸鎖成分のキノンと連結しているので、呼吸鎖の一員としても捉えることができる。今までにQPOの阻害剤としてアスコフラノンについてすでに、我々は報告済みである。それによるとアスコフラノンのKiは9.56nMで、mixed-typeの阻害様式であった。今回アスコフラノンの構造類似体のアスコクロリンを見出し、そのKiが24.7nM、阻害様式はQ1H2に対する競合阻害であることを明らかにした。さらに化合物ライブラリーのスクリーニングを続けたところ、illicicolin Bも阻害活性を有しているがそのIC50は約600nMであり、アスコフラノンやアスコクロリンよりも阻害活性が低いことが明らかとなった。 また、大腸菌を用いたリコンビナントQPOの発現系を確立し、精製リコンビナントQPOを調製して、動力学的解析を行った。QPOによるペルオキシダーゼの触媒反応は、まず酸化型QPOに結合したQ1H2が酸化され、酵素からQ1となって遊離する。一方QPOは還元され、この状態で安定しており、この還元型QPOがもしH2O2と結合した場合、H2O2は還元されて水になり、同時にQPOは酸化型に戻る。従って、このQPOによるペルオキシダーゼ触媒反応はping pong Bi Bi機構によって起こることが明らかとなった。
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