昨年度までの研究により、ラットの舌にLPSとアジュバントを混合して接種する事で、実験的に舌炎を作り出す事に成功し、またその際に同時に多数の血管造成が見られる事を明らかにした。このような血管造成には血管造成因子であるVEGFの発現が関与していると考えられたので、VEGFのmRNAの発現量を定量する事により、実際にVEGF遺伝子の発現量が増加している事を明らかにした。またこのVEGFを発現している細胞種としてマクロファージ等の抗原提示細胞の一部が発現している事も明らかにした。これまでの文献によると、マクロファージ系のcell lineを用いたin vitroの実験では単にLPSを投与しただけではVEGFの発現は上昇せず、アデノシンレセプターを活性化する事が必要条件であるという報告があるために、舌中に存在するマクロファージを始めとした抗原提示細胞ではその他の部位に存在している抗原提示細胞と比較して、既にアデノシンレセプターが活性化された状態になっているのではないか、という仮説を立てている。現在この仮説に基づき、チオグリコール培地を腹腔に投与して採取してきたマクロファージをコントロールとして、LPSとアジュバンドを舌に投与して舌中より単離してきたマクロファージを培養して、リアルタイムPCRの手法を用いて、VEGF遺伝子の発現量を測定し、またアデノシンレセプター遺伝子の発現量に差があるかを測定している。
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