研究概要 |
破骨細胞の細胞骨格は細胞運動、細胞内物質輸送、シグナル伝達、さらに細胞接着などの機能を担っている。破骨細胞に出現する特異な接着構造であるポドゾームは分岐アクチン線維とアクチン調節蛋白の集合体からなっており、アクチン線維はG-,F-アクチンとダイナミックに変動して接着機能を介して細胞機能を調節している。アクチンのbarbed endがポドゾーム周辺ではポドゾームコア部に向かうことを我々はこれまでの研究で明らかにしたが(Akisaka T et al., Cell Tiss Res 331,2008)コアの中心部ではどの方向であるのか不明のままであったが、アクチン線維の重合端は接着膜面に向かっていることを超微形態として可視化することができた。このようなアクチンの重合端(barbed end)を決めるため生きた破骨細胞にmyosin subfragmentを作用させアクチン線維のモノマーと結合させて形成される特有な左巻きロープ状を呈する方向によって超微構造上でbarbed endと同定される。その結果、ポドゾームコアではアクトミオシン系の収縮メカニズムが働きアクチン線維の重合、伸展によって生じる圧力が膜面を細胞質側から細胞膜面を基質側に押し付けることになり、より効果的なインテクリン依存性のポドゾーム接着メカニズムが成立すると考えられる。またポドゾーム間をつなぐアクチンケーブルの極性は多様でありポドゾームのクラスタリングやアクチンリング形成にアクチン線維極性は合目的的であると考えられた。従来のこの種の手法は界面活性剤を使用するため膜と細胞骨格の関連を追及することは困難であったが、ここでの研究では手法に改良を加え細胞骨格と膜を保存させながらアクチン線維の極性をナノメーターレベルで三次元構造の解析・考察することができた。
|