TNSALP(Ala99Thr)はこれまで当研究室で対象として来た劣性形式で遺伝する変異とは異なり、優性遺伝することが知られるユニークな変異である。野生型酵素のcDNAを鋳型に、当該の変異を部位特異的な突然変異法を用いて導入して変異タンパクをコードするcDNAを構築した。次に、このcDNA、あるいは野生型酵素をコードするcDNAを哺乳動物細胞にトランスフェクションすることで変異酵素および野生型酵素を発現し、細胞生物学的な解析を行ない細胞内での局在と触媒能を検討した。一方、一過性の発現系とは別により生理的な条件に近い発現系であるTet-On CHO細胞をもちいた発現系確立し、より詳しい細胞生物学的細解析を行った(蛍光抗体法による細胞内局在の観察、放射性メチオニンを用いたパルスーチェイス実験/免疫沈降、パルスーチェイス実験/低温での中性界面活性剤での抽出、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)消化実験によるGPI修飾の有無など)。その結果、 1.本変異酵素は全く活性を示さなかった。 2.本変異酵素は野生型とは異なりジスルフィド結合を介した高分子量の凝集物を形成することがわかった。従い、アミノ酸の置換により、立体構造に著しい変化が起きたことが示唆された。また、この高分子量の凝集物はTet-On CHO系においても認められたことから、一過性の発現によるものではないことが分かった。 3.しかも、この高分子量の変異酵素は細胞表面に発現されていることが、PI-PLCを培地に加えることで明らかになった。他のミスセンス変異でも高分子量の凝集物は出現することを筆者らは報告してきたが、この場合は小胞体に蓄積後に分解されるので、TNSALP(Ala99Thr)の場合は際立った特徴である。
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