研究課題/領域番号 |
21592357
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 孝一郎 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 准教授 (90263467)
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研究分担者 |
上崎 善規 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (40116017)
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キーワード | 核内受容体 / Mcl-1 / 癌細胞 / アノイキス / 増殖 / 浸潤 / 転移 / Aquaporin |
研究概要 |
本研究は、核内受容体Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)によって転写・発現が制御されているMyeloid cell leukemia-1(Mcl-1)、およびその関連分子が様々な癌細胞の増殖・浸潤・転移に関与していること、およびその詳細なメカニズムを明らかにすることを目的としたものである。 これまでの予備的検討、および本年度の研究から、Mcl-1、およびその関連分子が核内受容体であるPPARによって発現が制御されていることをDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅的解析により明らかにした。実際にこのMcl-1や、Aquaporinといった分子が癌細胞だけでなく、癌患者から採取された癌組織で過剰に発現していることも確認した。そこでこれらの分子をSmall interfering RNA(siRNA)法を用いて発現抑制したところ、癌細胞の増殖が劇的に抑制された。このときの増殖抑制は、細胞が接着できずに変形して細胞死を起こす、いわゆる「アノイキス」と極めて酷似した形態をとることも明らかにした。この癌細胞の接着抑制によって引き起こされる細胞死、いわゆる「アノイキス」を誘発させることにより、癌の増殖、および浸潤・転移を抑制することが可能となるため、将来の癌治療に応用できる可能性があると考えられる。さらにこの核内受容体PPAR経路の活性化は、不飽和脂肪酸などの物質がリガンドとして結合することにより起こることも明らかにし、正常細胞の癌化に高脂肪食が重要な役割を果たしていることを報告した。本年度に得られたこれらの成果は、各種の学会だけでなく多数の国際外国雑誌に報告しており、様々な癌細胞に対する薬物療法を考える上で重要な知見となるものと考えられる。来年度以降、より詳細な検討を進めていく予定である。
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