受容体や受容休チャネルの反復刺激によりその反応性が徐々に低下する活性化依存的下方制御(usc-dependent downregulation、ランダウン)は様々な機構で生じる。三叉神経中脳路核一次感覚ニューロン(MTN-PSN)上にシナプス下性及びシナプス外性に数多く発現しているγアミノ酪酸A型受容体(GABA_AR)は、AMPA型グルタミン酸受容体等とは異なり、早い活性化依存的下方制御を示さないと信じられてきた。しかし我々は、MTN-PSN上のGABA_ARが早い活性化依存的下方制御を示すことを報告した。ラット脳幹スライス標本上のMTN-PSNに対し、GABA_AR作動薬であるムシモールの溶液を2分毎にパフ投与し、5分間のムシモール灌流投与前/中/後の、パフに対する膜電位及び膜電流応答をそれぞれホールセル電流固定法及び電位固定法で記録した。ムシモール灌流投与により、パフに対する応答はほぼ完全に消失したが、15分間のウォッシュアウトにより、灌流投与前の振幅の30%前後まで回復した。しかし、蛋白キナーゼC(PKC)阻害薬であるケレリスリン及びカルシウムキレータ存在下では、ウォッシュアウトにより灌流投与前の振幅とほぼ同じレベルまで回復した。ケレリスリンあるいはカルシウムキレータのいずれか一方のみが存在する場合は、灌流投与前の振幅の40~60%まで回復した。小胞輸送を阻害するフォスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤ワルトマンニン存在下では、2分毎のパフ投与による応答のランダウンが有意に促進された。これらの所見から、MTN-PSNにおいて観察されるGABA_A応答のランダウンが、GABA_AR分子の活性化依存的な内在化によるものであり、その内在化は細胞内カルシウムイオンのキレートとPKCの抑制により阻害され、PI3Kの抑制により促進されることが明らかとなった。
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