研究概要 |
骨代謝制御における新規分子PRIPの役割解明を目的として,初年度は以下の解析を行い結果を得た。 野生型、PRIPノックアウト(KO)マウスについて、個体毎に体量および生殖に関わる器官(下垂体、子宮、卵巣、精巣)について、大きさ、形態、重量等を計測し、比較検討した。その結果、下垂体、卵巣、精巣の形態や重および体重には差がなかったが、子宮においては野生型に比べPRIP-KOマウスでその大きさや重量が小さいことが分かった。そこで子宮組織断面のHE染色を行ったが、両者で特に違いは見られなかった、野生型に比べPRIP-KOマウスで血中の性腺刺激ホルモン量が高植であったことを踏まえ、摘出した下垂体前葉を組織培養し、無刺激及びGnRH刺激時の分泌量を検討したところ、いずれの場合もPRIP-KO下垂体前葉において野生型の2倍以上の分泌量が見られた。次に、3、6、12ヶ月齢のメスの野生型およびPRIP-KOマウスより調製した大腿骨の組織学的解析を行った。その結果、特に6ヶ月齢において野生型に比べてPRIP-KOマウスでは酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色陽性の破骨細胞数がやや多く、これは性腺刺激ホルモン・性ホルモンのアンバランスから想定された通りであった。しかし、HE染色による骨芽細胞数の比較においてもPRIP-KOマウスの方が多い傾向が観察された。更に、μCTを用いた3次元計測では、海綿骨において野生型に比べPRIP-KOマウスで骨量や骨梁の幅、単位長あたりの骨梁数が多かった。これらのことから、PRP-KOマウスでは、骨芽細胞、破骨細胞ともに数が増加し、特に機能的な骨芽細胞の増加、あるいは機能的破骨細胞の減少などによって骨代謝が亢進し骨量が増加している可能性が示唆された.
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