研究概要 |
歯周炎では歯周ポケットに入り込んだ嫌気性の細菌が増殖することによる炎症反応が原因となり歯槽骨の破壊が引き起こされる。この疾患では、骨を吸収する破骨細胞の活性を制御することが重要となるが、骨破壊の進行には生体の遺伝的素因や免疫系が大きく関わっており、炎症にかかわる免疫系の細胞の作用を明らかにすることが重要となる。本研究においては、歯周炎の原因菌のひとつであるP.gingivalisを用いて実験的にマウスに歯周炎による骨破壊を引き起こす実験モデル系を検討し、炎症性サイトカインの産生の抑制に関わるサイトカインIL-27の受容体であるWSX-1遺伝子欠損マウスと野生型マウスを使用して、その骨破壊のメカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、野生型マウスにP.gingivalisを感染させ実験的歯周炎を引き起こし、その上顎骨と下顎骨の骨破壊について検討するとともに、脾臓を単離してP.gingivalisで刺激しそのサイトカインの産生について検討した。P.gingivalisを感染したマウスの下顎骨では歯槽骨の後退が観察されたが、上顎骨では顕著な骨破壊が見られなかった。また、P.gingivalisを感染したマウスでは、TNFα,IFNγ,IL-6及びIL-17aの産生の増大が見られた。また、WSX-1遺伝子欠損マウスを用いて同様に歯周炎を引き起こし上顎骨と下顎骨の歯槽骨の骨破壊について検討した。その結果、WSX-1遺伝子欠損マウスにおいては、野生型に比べて下顎骨で顕著な骨破壊が見られた。これらのことから、実験的歯周炎の骨破壊の制御にはIL-27が関わる可能性が示された。
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