本年度においては、まず、WSX-1遺伝子欠損マウスを用いてP.gingivalisを感染させ歯周炎を引き起こし歯槽骨の骨破壊について、X線マイクロCTスキャナーを用いて定量的な解析を行った。その結果、下顎骨に比べ上顎骨において特に、WSX-1遺伝子欠損マウスでは野生型のマウスと比較し骨破壊の亢進が見られることが分かった。さらにマクロファージからの破骨細胞分化に対するIL-27の作用について検討した。IL-27はRANKLによるマウス破骨細胞分化に対しては殆ど影響しなかった。昨年度、RANKLで刺激したマクロファージにP.gingivalisを感染させると破骨細胞の分化が顕著に促進することが明らかとなったため、感染による破骨細胞の形成に対するIL-27の作用を検討した。野生型及びWSX-1遺伝子欠損マウスの骨髄を単離し骨髄マクロファージを形成し、RANKLを添加し24時間培養後、P.gingivalisで刺激して破骨細胞分化を誘導した。その結果、WSX-1遺伝子欠損マウスのほうが野生型マウスと比較して多くの破骨細胞の形成が見られ、IL-27がP.gingivalis感染によって誘導される破骨細胞の形成の抑制に関与することが考えられた。そこで、RANKLでプライムしたマクロファージからP.gingivalis感染によって誘導される破骨細胞分化のメカニズムについて検討した。その結果、P.gingivalis感染によって誘導される破骨細胞分化は、破骨細胞分化シグナルであるNFATc1のシグナル阻害剤FK502の添加によって顕著に阻害されたが、TNF-α中和抗体の存在下においても誘導され、NF-kBシグナル阻害剤はP.gingivalis感染によって誘導される破骨細胞の分化を阻害しなかった。これらの結果から、感染によってマクロファージから産生されたIL-27は、P.gingivalis感染によって誘導される破骨細胞分化に特異的なシグナルを阻害して、破骨細胞の形成を制御する可能性が示唆された。
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