研究概要 |
Staphylococcus aureus感染によって発症するブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は,表皮内棘融解・水疱形成により,全身の皮膚が脱落する疾患で,表皮剥脱毒素(exfoliative toxin A, ETA)はその病原因子として発見された。作用機序は永らく不明であったが,最近,セリンプロテアーゼ様3次構造をとることが示され,さらに,皮膚組織の細胞間接着装置であるデスモソーム構成タンパク質デスモグレイン1のGlu_<381>-Gly_<382>を特異的に分解することが示された。しかし,未だ他の基質に対する活性は明らかではない.そこでETAとその一部領域欠失分子を大腸菌で発現し、プロテアーゼ活性と表皮剥脱毒素活性を比較した。その結果,蛍光基質(LLE-MCA)で初めてETAのプロテアーゼ活性が認められ,その表皮剥脱毒素活性発現にはプロテアーゼ活性が必須であることが明らかとなった。 歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisは細胞内のエネルギーおよび炭素源として糖質は利用せずもっぱら細胞外タンパク質を分解して利用する。そのためにまずエンドペプチダーゼであるジンジパイン類がタンパク質をオリゴペプチドに分解し,次いでジペプチジルペプチダーゼ(DPP)がジペプチドに、一部はトリペプチジルペプチダーゼがトリペプチドに分解しや後,菌体内に取り込む。そのためDPP活性を効果的に阻害できれば歯周病の予防薬となり得る。これまで本菌の産生するDPPはPro特異的なDPPIVと疎水性アミノ酸指向性のDPP7だけが知られていた。しかし私たちは本研究で酸性アミノ酸(Asp/Glu)特異的なDPPが発現していることを明らかにし,新規にDPP11と命名した。DPP11は多くのバクテリアに発現していることも明らかとなった。歯周病原菌をはじめ多くの細菌類は,多様なDPPを持つことで細胞外のタンパク質を効率的に分解していることが明らかとなった。
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