研究概要 |
本研究は交感神経-副腎系が咀嚼筋の血流調節における役割を明らかにすることを最終的な目的とし、本年度(平成21年度)は咀嚼筋の血流に対する循環カテコラミンの影響とそれらの反応に関わるメカニズムについて検討した。実験には、Wistar系雄性ラット(10-20週齢)を用いた。ラットはウレタンを用いて麻酔して筋弛緩剤で非動化した後、人工呼吸器を用いて管理した。体幹血圧は大腿動脈から観血的に記録し、諸種の薬物は大腿静脈に挿入したカテーテルから投与した。咀嚼筋(咬筋)及び下唇の血流量はレーザードップラー血流計を用いて継時的に測定・記録した。その結果、1)アドレナリンの静脈内投与は濃度依存性(0.01-1μg/kg)に咬筋に急峻な血流増加を誘発するが、下唇の血流には影響を及ぼさない、2)ノルアドレナリンの投与はいずれの血流にも影響を及ぼさない、及び3)アドレナリンの投与で生じる咬筋の血流増加はアドレナリンβ受容体遮断薬(プロプラノロール,0.1mg/kg)により顕著に抑制されるが、自律神経節遮断薬(ヘキサメソニウム,10mg/kg)、ムスカリン受容体遮断薬(アトロピン,0.1mg/kg)及びアドレナリンα受容体遮断薬(フェントラミン,1mg/kg)では影響を受けないことが明らかになった。これらの結果から、循環アドレナリンは咬筋に急峻な血流増加を誘発し、この血流増加はアドレナリンβ受容体を介した咬筋の血管拡張反応に起因していることが示唆される。
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