研究概要 |
マクロファージは細菌感染、慢性炎症性疾患、腫瘍において宿主の生体防御機構やまた病態形成においても心な役割を演じている。これらマクロファージの持つ多彩な機能は、マクロファージが存在する微小環境からの細胞外刺激の違いにより獲得されていくと考えられている。従来からインターフェロン・ガンマーによって活性化したマクロファージは、炎症性マクロファージとして抗菌活性、抗腫瘍活を有することが知られている。これに対して、抗炎症性サイトカインであるIL-4やIL-13により刺激を受けたマクロファージは抗炎症性マクロファージあるいはM2マクロファージとして免疫抑制的な機能を持つことが明らかにされている。近年、このM2マクロフアージが腫瘍組織に浸潤しているマクロファージと類似した性状を有していることが報告され、免疫抑制的な環境を作り出し、さらに腫瘍の進展、増殖に積極的に関与していることが示唆されている。しかしながら腫瘍局所の微小環境がどのようなメカニズムによって抗炎症性マクロファージを誘導するのかについては不明な点が多い。そこで本研究課題では、腫瘍局所の微小環境、とくに低酸素環境かIL-4、IL-13によって誘導される抗炎症性マクロファージの細胞内情報伝達経路や遺伝子発現にどのような影響を与えるのかを検討し、以下の結果を得た。1)M2マクロフアージのマーカ遺伝子の一つであるArginase-1(Arg-1)の発現は、IL-4,IL-13によって時間依存的誘導され、その発現は低酸素により相乗的に増強した。
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