研究課題
歯周病はPorphyromonas gingivalis等の歯周病原菌感染により発症する慢性炎症で、歯槽骨の吸収を伴う。P. gingivalisが産生するタンパク分解酵素ジンジパインは、歯周病の病態形成に重要な役割を演じることが知られている。ジンジパインは基質分解部位から、Arg特異的ジンジパイン(Rgp)とLys特異的ジンジパイン(Kgp)に分類される。我々は、Kgpが破骨細胞分化阻害因子OPGを分解することでLPSその他のTLRリガンドによる破骨細胞分化誘導を促進する一方、Rgpにはその活性がないことを明らかにした。そこで、P. gingivalisのRgp欠損株、Kgp欠損株および野生株をマウスの頭部皮下に感染させ、頭蓋骨における破骨細胞形成を観察したところ、野生株で見られた破骨細胞形成に比べ、Kgp欠損株感染での破骨細胞分化は抑制されていたが、Rgp欠損株は野生株と同程度の破骨細胞形成を誘導したことから、骨吸収におけるKgpの重要性が確認できた。KgpによるOPGの優先的な分解部位がデスドメイン様領域であることが示唆されたことから、LysをAlaに置換した多種類の変異OPGを調製し、Kgpによる分解を調べたところ、野生型OPGとの有意な差が見出せなかった。このことから、KgpはOPGのデスドメイン様領域の複数のLysのC末側を同程度に分解するものと思われる。KgpによるOPGの分解と破骨細胞分化誘導性の炎症性サイトカインの分解を定量的に比較したところ、OPGより安定なTNF-αやIL-1βでは破骨細胞分化がKgpによって促進されたのに対し、OPGより分解されやすいIL-17では、Kgpによる破骨細胞分化は観察されなかったことから、OPGの分解は炎症性破骨細胞分化を調節する重要な要因と考えられた。
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