研究課題
唾液腺における水やイオン分泌は、腺房細胞の基底側から腺腔側への水・イオン輸送が関与する。この輸送系は、細胞内を経由する経細胞輸送系と、細胞間を経由する傍細胞輸送系から構成される。本研究は、ラット顎下腺における傍細胞系輸送の制御についての検討を行った。灌流顎下腺標本のを用い、蛍光色素であるルシファーイエローを灌流することにより傍細胞輸送系の関与を検討する実験系を確立した。この実験系において、神経伝達物質のニューロキニンA(NKA)による傍細胞輸送系の促進を明らかにした。同様の方法で唾液促進剤であるピロカルピンの効果を検討したところ、NKAとは異なった応答時間の長い反応が認められた。この効果は他のM3アゴニストのセビメリンでも認められたことから、M3受容体を介するものであることと考えられた。しかし、水分泌に伴った細胞内Ca^<2+>動態や酸素消費に関しても同様な効果が認められたことから、受容体での制御が関与すると推測された。一方、傍細胞輸送系を維持するラット顎下腺由来の培養細胞(SMIE細胞)を用いた実験系においても検討を行ったところ、ウシ胎児血清に成長因子の一つであるIGF-I阻害剤を加えると傍細胞輸送に関わるタイト結合の構造と機能が失われた。またウシ胎児血清の代わりにIGF-Iを用いると傍細胞輸送機能の維持が認められたことから、傍細胞系維持にIGF-Iの制御が重要であることを明らかにした。この機能はPI3キナーゼ阻害剤により阻害されることから、PI3キナーゼを介したリン酸化が重要であることが示唆された。
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Arch Oral Biol.
巻: 55 ページ: 737-744
巻: 55 ページ: 963-969