研究概要 |
今年度は、三叉神経系の疼痛伝達に関わる三叉神経節ニューロンの興奮性に対するグリア細胞由来神経栄養因子(Glial cell line deribed neurotrophic factor : GDNF)の生理的役割を明らかとするために、逆向性蛍光標識及び免疫組織化学法を用いて解析を行った。ラットの顔面皮膚に蛍光色素Fluorogold : FGを注入して、この部位を支配する三叉神経節ニューロンをFGにより標識した。3日後、麻酔処置ラットをホルマリン灌流固定後,片側三叉神経節を取り出し,後固定後,厚さ10μmの凍結切片を作成した。三叉神経節切片をスライドガラス上に付着させ,GDNF抗体とGDNF受容体(GFRα1)抗体を用いて免疫染色を施した。GDNF, GFRα1免疫陽性細胞の解析は共焦点レーザ顕微鏡を用いてFGで標識された三叉神経節ニューロンの細胞体の直径により<30μmを小型、31-40μmを中型、>41μmを大型と分類した。GDNF免疫陽性細胞は、主に侵害受容に関わる小型-中型の三叉神経節ニューロンで観察された。これらの細胞のほとんど(約86%)はGFRα1陽性であった。また三叉神経節ニューロン周囲のグリア細胞もGDNF陽性を示すものが観察された。FGにより逆行性に標識されるニューロンのうちGDNF、GFRα1陽性ニューロンも小型-中型(<36μm)三叉神経節ニューロンであった(98/126、78%)。これらの結果は、三叉神経系を介する侵害受容伝達に三叉神経節内でパラクリン・オートクリン分泌されたGDNFが深く関わることを強く示唆している。
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