破骨細胞の分化と骨吸収を抑制するアルクチゲニンを用い、破骨細胞における標的因子の探索および骨代謝への関与を検討し、以下の成果を得た。 1.破骨細胞に対するアルクチゲニンの作用メカニズムの解析:これまでの解析から、アルクチゲニンの標的因子がNFATc1経路であることが示唆された。本年度は、NFATc1の細胞内局在やリン酸化状態を解析した。成熟破骨細胞のNFATc1抗体による免疫染色の結果、アルクチゲニン処理でNFATc1は核移行をしていた。免疫沈降によりNFATc1を精製しそのリン酸化状態を抗リン酸化抗体で解析したが、コントロール自体のリン酸化があまり検出されず、有意な差は明らかに出来なかった。 2.恒常的活性型のNFATc1遺伝子をレトロウイルスシステムを用いて骨髄マクロファージに導入して破骨細胞分化を検討した。その結果、恒常活性型NFATc1はサイクロスポリンによる破骨細胞分化の抑制を解除できたが、アルクチゲニンによる分化抑制は解除できなかった。 3.クロマチン免疫沈降法を用いたNFATc1の標的遺伝子への結合活性を検討した。Oscar遺伝子のプロモータに存在するNFATc1結合領域に対するPCRプライマーを作成し、NFATc1抗体で免疫沈降後PCRを行なった。その結果、RANKL刺激2日目で結合が検出されたが、アルクチゲニン存在下では結合が抑制されている結果として、PCRバンドが検出されなかった。 4.T細胞を介する炎症性骨吸収へのアルクチゲニンの作用:T細胞に対するアルクチゲニンの抑制作用が報告されているが、炎症性骨吸収への作用は不明である。T細胞マーカに対するアルクチゲニンの作用を検討した。その結果、破骨細胞分化を強く抑制する濃度であっても、NFATc1の標的遺伝子であるIL-12やGM-CSFの発現は正常に誘導されていた。
|