本研究は、平成21年度~23年度の期間に、1)神経細胞増殖・活性化因子を化学合成し、合成標品の安定供給の確立。2)合成標品の生物活性の確認と実証。3)新規医薬品としての可能性を検証することを目的として行われるものである。平成21年度は化学合成と精製を行った。得られた成果は以下の通りである。 1.新規β-L-NADの化学合成。 予備試験でβ-L-NADの合成が可能であることが確認されたので、合成用素材として、ニコチンアミドやアデノシン、リボースなどを用い、レトロ合成方法により以下に示す化学合成標品を得た:3-(アミノカルボニル)-1-[5-O-[[1-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-1-デオキシ-β-D-リボフラノース-5-O-イル]ホスホニルオキシ(オキシラト)ホスフィニル]-β-L-リボフラノシル]ピリジニウム。この化合物はβ-L-リボースを構成糖とするNADとリボース部分が天然型のD-リボースであるAMPとのリン酸エステル結合反応を行うことにより製造することができる。合成物/原材料重量比はおよそ65%であり、合成効率は概ね良好と考えるが、kg単位の合成を行うことになれば、効率はさらに向上すると考える。 2.活性炭およびイオン交換カラムを用いた合成票品の精製。 21年度の最大の収穫はこの「精製」であった。合成過程で生じる未反応物や触媒などの不純物は活性炭やイオン交換カラムクロマトにより効果的に除去する方法を見出すことができた。この精製方法では、操作中における試料のロスは全体でおよそ10%であり、十分な量が回収された。
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