研究概要 |
【目的】破骨細胞は骨基質側の波状縁膜に発現するATP駆動性ポンプの液胞型H^+-ATPase(V-ATPase)とClC7型Cl^-チャネル(Clcn7)の2つの異なる膜輸送分子が連動してHCl(酸)を分泌し、骨ミネラルを溶解して血清Ca^<2+>濃度を調節する。これら酸分泌輸送体の中でClcn7はKOマウスが骨吸収不全により大理石骨病を呈すること(Kornak et al., 2001)、常染色体優性骨大理石病II型の患者全てにClcn7の点変異が認められることが報告されている(Cleiren et al., 2001)。私はこのClcn7をHEK293細胞に過剰発現させてそのCl^-電流について検討した結果、Clcn7過剰発現細胞には外液酸性状態(pHo=5.0)で活性化される外向き整流生のCl^-電流が認められた。さらに、常染色体優性骨大理石病で認められた点変異体の中で、特に215番目のグリシンがアルギニンに置換した変異体の過剰発現細胞ではCl^-電流が有意に小さくなることも明らかになった。(Kajiya et al., 2009)。しかしながら、このClcn7に会合し、この機能調節を行う分子に関しては明らかではない。そこで、本研究は破骨細胞に発現するCl^-輸送体Clcn7に相互作用し、その機能的な調節を行う新規分子の検索・同定し、その機序を明らかにすることを目的とした。【方法】破骨細胞はマウス骨髄細胞とRAW264.7細胞より得た。候補分子の検索にはイーストツーハイブリット法を用いて検索した。タンパク質の相互作用は主に免疫沈降法及び免疫染色法にて検討した。又、破骨細胞におけるCl^-分泌能はホールセルパッチクランプ法及び蛍光測光法を用いて検討した。【結果と考察】イーストツーハイブリット法によりClcn7のC末端をベイトしてマウス胎児のcDNAライブラリーより結合する分子をスグリーニングしたところ、メバロン酸合成経路のファーネシルジリン酸合成酵素(Fdps)が候補分子の一つであることが明らかになった。そこで、このFdps分子をクローニングしHEK293細胞へClcn7と共に過剰発現させたところ両分子が会合すること免疫沈降法により明らかになった。さらに、破骨細胞においても同様に会合し、共局在することが免疫沈降法および免疫染色法にて明らかになった。又、この分子の阻害剤は、Clcn7に由来する外液酸性化によるCl^-電流の活性化及び細胞外へのCl^-分泌を有意に抑制した。以上の結果より、Clcn7のC末端にFdps分子が結合し、破骨細胞のCl-分泌能を調節している可能性が示唆された。
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