超音波診断法は非侵襲的であり、簡便に適用でき、唾液腺内の腫瘤性病変や腺体の変化の把握に有効であるが、導管の微細な変化をとらえることはきわめて困難である。唾液腺造影法と超音波診断法との両者の利点を合わせ持った新しい診断法が確立できれば、より正確な唾液腺疾患の診断が可能になることが期待される。 超音波造影剤を、経導管的に唾液腺に注入した後、超音波検査を行い、腺体の変化の把握に加え導管系の微細な変化も超音波検査法で検出するという、超音波唾液腺造影法という新しい診断法の確立を最終目的とし、基礎研究を行った。 平成21年度は3%硫酸バリウムを入れた2.5%寒天溶液に種々の径のマイクロチューブを埋入したファントームを作成し、新しい超音波造影剤ソナゾイドを種々の速度で応用した。以前に応用したレボビストは操作時間が5分と短く不安定で、ファントームでの造影効果は今回のソナゾイドと同様に認められたものの、複雑な手技を要する唾液腺造影への応用は難しいと考えられた。今回のソナゾイドは最も径が小さい1mm以下のチューブでも十分な造影効果が得られた。注入速度を臨床での唾液腺造影の注入速度と同等の0.1ml/secより遅くしても造影効果が保たれていた。また造影剤の使用可能時間が調整後約2時間と長く、操作性が優れていた。浸透圧が高くpHが低いレボビストに対し、ソナゾイドは浸透圧およびpHが生理食塩水に近く、またファントーム実験の際、チューブ壁に接する面への残留はほとんど認められず、為害性も少ないと考えられた。
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