我々は、より正確な唾液腺疾患の診断を可能にするために、超音波造影剤を経導管的に唾液腺に注入した後、超音波検査を行い、腺体の変化の把握に加え導管系の微細な変化も超音波検査法で検出するという、超音波唾液腺造影法という新しい診断法の確立を最終目的とし、基礎研究を行っている。 平成22年度は以下の検討を行った。 1. 造影剤濃度の検討 通常血管に投与するソナゾイドを唾液腺に応用するには、体内での血中濃度(1/5000)前後に希釈する必要がある。前年度と同様のファントームを作成し、100倍希釈、1000倍希釈、5000倍希釈した造影剤の造影効果を記録した。いずれの濃度でも適正な造影効果が得られたが、唾液でさらに希釈されることを考慮すると、1000倍程度の希釈がよいと考えられた。注入速度を臨床での唾液腺造影の注入速度と同等の0.1ml/secより遅くしても造影効果が保たれていた。また造影剤の使用可能時間が調整後約2時間と長く、操作性が優れていた。浸透圧が高くpHが低いレボビストに対し、ソナゾイドは浸透圧およびpHが生理食塩水に近く、またファントーム実験の際、チューブ壁に接する面への残留はほとんど認められず、為害性も少ないと考えられた。 2. 造影剤の為害性の検討 SDラットの耳下腺ステンセン管に1000倍希釈したソナゾイドを1μl/secの速度で20μl注入した後、2時間後、24時間後、3日後、7日後、14日後の耳下腺組織を採取し、H-E染色を施して観察した。 対照群には、造影剤の代わりに生理食塩水を注入し、同様の期間経過後に耳下腺組織を採取し、H-E染色で観察した。いずれの組織にも炎症性反応は検出されず、臨床応用が可能であることが示唆された。
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