研究概要 |
AIREは主として胸腺髄質上皮細胞(TEC)に発現し、自己組織特異的抗原の発現を制御する核内転写制御因子である。われわれは組織培養系を用いた予備実験でデキサメタゾン(Dex)が胸腺髄質細胞におけるAIREの核内輸送を阻害する所見を示したことから、本年度は培養細胞系で同様の所見が再現されるか否かを検索した。徳島大学松本満先生よりHela株にAIREを安定発現させたHela/AIRE株を譲り受け、Hela/AIREにDexを添加し、AIRE局在の変化を共焦点レーザー顕微鏡で検索したが、核内から細胞質への移行はみられなかった。現在、国立衛生研の笠井道之先生から譲渡いただいたTEC株にAIREを安定発現させ、Dexの効果を検索しようとしているところである。一方、AIREの核内輸送に関わる分子としてmRNA processing複合体であるNUP93、XPO1、KPNB1、RanBP2等が関与しており、本実験の当初の標的であったIPOはAIREの核内輸送には関与していないことが示された(Cell,140:123-35,2010)。今後はHela/AIREおよびAIREを安定発現させたTEC株にDexを添加し、これら遺伝子発現の変化を追跡しようと計画している。
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