研究概要 |
顎関節症における関節での骨吸収を想定し,IL-17Aが骨芽細胞(MC3T3-E1細胞)の炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響を調べた。その結果,IL-17AはプロスタグランジンE_2(PGE_2)産生を増加させ,そのオートクリン機構によって骨吸収に関連する炎症性サイトカイン産生を促進することが明らかになった(Arch Oral Biol 55,679-688,2010)。次に,L-17Aが骨芽細胞を介して破骨細胞前駆細胞に間接的に作用することを想定し,IL-17AでMC3T3-E1細胞を刺激して得られた培養上清で破骨細胞前駆細胞(RAW264.7細胞)を培養後,破骨細胞への分化,骨吸収関連酵素の発現および象牙質片上における破骨細胞性吸収窩形成に及ぼすIL-17の間接的な影響を調べた。その結果,IL-17AはRAW264.7細胞の破骨細胞への分化を間接的に促進し,破骨細胞のカテプシンKとマトリックス金属プロテアーゼ(MMP)-9発現を間接的に増加させたが,炭酸脱水酵素(II型)発現には影響を及ぼさなかった。象牙質片上に形成される吸収窩の数にはIL-17A刺激の影響を認めなかったが,吸収窩の形態には違いを認めた。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択阻害剤のセレコキシブは,RAW264.7細胞の破骨細胞への分化,カテプシンKおよびMMP-9発現の誘導を抑制した。siRNAでMC3T3-E1細胞のCOX-2発現を抑制すると,RAW264.7細胞のカテプシンKおよびMMP-9発現誘導が抑制された。これらの結果から,IL-17Aは,骨芽細胞のPGE_2産生増加を介して,破骨細胞前駆細胞の破骨細胞への分化と破骨細胞の機能発現を促進することが示唆された。また,セレコキシブは,PGE_2を介したIL-17Aによる骨基質タンパクの水解を抑制することが示唆された(Biochimie 93,296-305,2011)。
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