研究概要 |
IL-17Fが軟骨基質タンパク代謝に及ぼす影響を調べた。その結果,IL-17Fは,軟骨細胞のmatrixmetalloproteinase(MMP)-1,-3,-13,cyclooxygenase(COX)-2発現とprostaglandin(PG)E2産生を増加させ,tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-2,-4,II型collagen,aggrecan,link protein,COX-1発現を減少させた。MMP-2,-14,TIMP-1,-3発現には変化を認めなかった。NS-398は,IL-17FによるTIMP-4,aggrecan,linkprotein発現の減少効果をブロックした(Cytokine56,2011)。また,IL-17Fは,軟骨細胞のplasminogenactivator inhibitor(PAI)-1,COX-2発現とPGE2産生を増加させ,uPAとCOX-1発現を減少させたが,tPA発現には変化を認めなかった。NS-398は,IL-17FによるuPAとPへ1-1発現の減少と増加効果をブロックした(Hard Tissue Biol 20,2011)。以上の結果から,IL-17Fは,軟骨細胞による軟骨基質合成を抑制し,MMP-1,-3,-13発現増加とTIMP-2,-4発現減少により軟骨基質タンパク代謝を分解系に傾けること,軟骨細胞のPAI-1発現増加とuPA発現減少によりplasminogen/plasmin経路による軟骨基質の分解を抑制することが示唆された。また,軟骨基質タンパク代謝に関わる分子の発現には,PGE2のautocrine作用の関与が示唆された。次に,自己免疫疾患や炎症性疾患においてIL-17Aが骨芽細胞に作用することを想定し,IL-17Aが細胞外基質タンパク(ECMP)の発現と石灰化nodule形成に及ぼす影響を調べた。その結果,IL-17Aは骨芽細胞のECMP発現を誘導するが,骨の石灰化には影響しないことが明らかになった(Hard Tissue Biol 20,2011)。また,破骨細胞前駆細胞をIL-17Aで刺激するとIL-18R accessory protein産生が増加すること,破骨細胞前駆細胞をIL-17Aで刺激後の培養上清にIL-18を加えて調整した培地をCD4+Tリンパ球に振りかけると,TNF-α産生には変化を認めなかったが,破骨細胞分化を抑制するGM-CSF産生が増加することが明らかになった。
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