従来の研究から歯周病原菌Fusobacterium nucleatumで免疫するとマウスがTh1型に傾き、細胞性免疫の誘導を促すと言う結果を得ている。口腔の感染症は内因性感染であるため感染予防に役立つ病原因子の特定は難しいが、細胞性免疫がDNAワクチンで賦与されれば、口内炎や嚥下性肺炎などの予防に役立つ可能性があると考えられ、F.nucleatumのDNAで細胞性免疫の誘導性の可能性を確認する目的で本実験を行なった。 今年度はF.nucleatumの全DNAにadjuvant効果の高い水酸化アルミニュウム(ALUM)を加えた時マウスへの免疫効果が増強するかどうかを検討することが目的であった。DNA抽出キットを使用して抽出したF.nucleatum DNA 100μgとALUM 50μgを、マウス後足腿筋肉に濃度を変え50μl注射した。実験1はDNAを初回のみ投与。実験2は3週間毎に追加免疫を行う。3週間毎に9週まで血清を採取しIgM、IgG抗体価をDory等の方法に準じELISAの変法により測定した。抗原はDNAと超音波破砕菌体とした。その結果、ALUMのみの免疫において、初回免疫でDNAに対してIgMが3週間後に上がり始め、6週間後にピークを示しその後漸次減少した。追加免疫では6週間後に高い値を示すものの相加、相乗効果は無かった。菌体に対してはIgM、IgG共に殆ど上がらなかった。F.nucleatum DNAとALUMで免疫した結果はALUMのみで免疫した時と同じ結果を示し有意差がなかった。菌体に対してもIgM、IgG共に殆ど上がらなかった。これらの結果からadjuvantであるALUMを加えても抗体産生には全く相加、相乗効果が得られないことが分かった。F.nucleatumの全DNAによる抗体価は100μg濃度で初回免疫6週間後が最も高くなり免疫効果があることがわかった。
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