研究概要 |
頭頚部悪性腫瘍には放射線治療が適応されることが多いが,歯科インプラント治療の普及に伴い,インプラント体が照射野に含まれることも十分考えられる.その場合,埋入された歯科インプラントからの散乱線により周囲骨の線量が増大することが考えられ,結果として,骨壊死や歯科インプラント脱落の危険性が増加するかも知れない.しかしながら,歯科インプラント周囲の正確な線量分布を実測することは困難である. そこで,モンテカルロ法を用いた線量シミュレーションにより歯科インプラント周囲の線量を評価する研究を創出した. 本年度には,下顎の数学ファントムの作製とモンテカルロ法を用いた線量シミュレーションを行なった. 被写体としてランドファントムを用いてマルチスライスCT撮影(GE横河メディカルシステム,Hispeed NxiPro)を行ない,その下顎骨領域のCT画像において,CT値を用いて骨,軟組織および空気の3領域に分離し,下顎の数学ファントム(0.3x0.3x0.3mm^3ボクセル)を作製した. 線量シミュレーションにおいては,モンテカルロコードEGS5(Electron Gamma ShowerVer5)を使用した.舌癌に対する6MV-X線を用いた外部照射の放射線治療(照射野5X5cm,SSD100cm)を設定した.そして,歯科インプラント(Ti)を下顎第1大臼歯部に配置し,歯科インプラント周囲の散乱線による影響を検討した.また,対照として,歯科インプラントが存在しない場合の計算も行なった. 来年度にこれらの結果をまとめることを予定としている.
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