通常のレーザードッブラー血流計では、ドップラー効果を検出する周波数変動の帯域を20Hz-20KHz程度に設定し、血流の測定レンジ上限を100mL/min/100g程度に調整している。本年度における本研究では、超低速血流が想像される歯髄組織を想定し、対象とする周波数帯域を20Hz-5KHz程度に設定し、血流の測定レンジ上限を通常の1/10程度、即ち100mL/min/100g程度に調整した試作器を用いて、機器の有用性を検討した。 測定に先立ち、歯学研究科研究倫理専門委員会から研究計画の承認を得て社会的コンセンサスを実施前に得た。 本年度は成人の有髄上顎中切歯を測定対象とし、試作機器と市販されている通常の機器を用いて、同一歯を同時に血流測定を可能にするために、歯面からの反射光を2分し2つの血流計に同時に送光を可能にする測定プローブを作成し、これを用いて2つの機器による同時測定を行ない、得られた信号を比較した。 その結果、流速を表示する出力信号は、低速血流測定様の試作機器は、従来の機器に比較し10倍程度の大きな血流信号の測定が可能であった。また、従来の機器では確認できないレベルの信号しか検出できない歯からも、明らかな血流信号の検出が可能であった。 これらの結果から試作機器は低流速の歯髄血流検出感度の向上に有効であると考察された。特に歯髄の石灰化が進んだ高齢者の歯を測定対象とした場合に有効であると、想定される。
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