本年度の研究計画予定は測定感度を向上させた歯髄専用レーザードップラー血流計を試作し、その有効性を検証することであった。本年度は専用の周波数解析システムを用いて、歯髄血流によって生じるドップラーシフトを測定し、これから平均血流速度を算定した。その結果、歯髄では5kHz程度までのシフトを確認できた。比較として行った指尖などは15KHz-20KHz程度のシフトが確認された。この結果から通常のレーザードップラー血流計では、その流速対象がより速いため、歯髄血流測定には理想的ではないことを確認した。また、歯髄血流測定の際、光不透過性のラバーシート装着をしない場合、単に血流量が増すだけでなく、歯肉血流速度と同様の流速成分が主となる結果を得た。これは測定の際に歯周組織血流由来の信号成分が多く含む可能性を証明したものであり、光不透過性のラバーシート装着の必要性を強く示唆するものであった。 流速測定の結果をもとに、測定感度を向上させるために、高速の血流は処理せずに、低速の血流によって生じる周波数シフト(具体的には5KHzまで)に関してのみ演算を行うように試作機器を調整し、これを用いて実際のヒト歯髄で従来の血流計と専用血流計とで同時測定を行った。その結果、従来の血流計では信号が全く検出されない歯であっても、専用血流計では明らかな信号成分を検出できた。また、従来の血流計で測定した信号に比べ、ノイズ成分が少なく、数倍から10倍程度の大きな脈動性の信号を検出できたことから、本研究で開発した歯髄専用血流計の有用性が検証できた。
|