本研究では、異なるう蝕形態(咬合面・隣接面・根面)における、罹患象牙質除去前後の表層pH変化を、臨床用微小pHセンサーを用いて口腔内にて直接測定することで、各種う蝕症例間のう蝕活動性評価結果を比較検討する。さらに、除去されたう蝕サンプル中のう蝕原因細菌叢を、Reaitime-PCRを用いて定量的に分析することで、pH分析ならびに細菌分析の観点から、各種う蝕の進行メカニズムについて解析を試みる。 平成21年度は、本研究に同意の得られた患者の口腔内において、上記う蝕部位におけるう蝕除去前後の表層pH変化を、臨床用微小pHセンサーを用いて直接評価し、その臨床データを集積に尽力した。また、上記pH測定時に、同一被験者から刺激唾液、う蝕周囲のプラークおよび象牙質う蝕サンプルを採取し、サンプル中のう蝕細菌叢について、Real-time PCRシステム(Applied Biosystems7500リアルタイムPCRシステム)を用いた定量的遺伝子分析を行った。その結果、本年度目標とした、サンプル数100症例を超えたものの、その多くの対象う蝕が慢性う蝕象牙質であったため、pHデータならびにPCRデータともに、各部位間におけるう蝕活動性(表層pH値)ならびに細菌叢に顕著な差が認められなかった。このため、来年度以降は、急性う蝕象牙質サンプルの集積に尽力することで、今年度までの結果で不明瞭であった、う蝕部位ごとのう蝕活動性ならびに特徴的なう蝕原因細菌叢について鋭意検討を加えることを課題とした。
|