本課題の目的は、歯の漂白材・漂白法の評価のために、抜去牛歯を用いた変色歯モデルを確立することにある。可視光応答型酸化チタン光触媒を含むオフィスブリーチ材の漂白効果に影響を与える因子を調べるため、青紫半導体レーザー(波長405nm)を用いて、その照射条件が漂白効果に及ぼす影響について検討したところ、漂白効果は出力と照射エネルギー量の影響を受け、Duty比やパルス幅の影響を受けないことが明らかとなった。また、アルゴンレーザー(波長488nm)と比較したところ、低波長の青紫半導体レーザーの方が、より高い漂白効果を示した。一方、歯の漂白後の色の後戻り抑制効果について、牛歯変色歯モデルを用いて評価を行ったところ、カゼイン・ホスホペプチド、アモルファス・カルシウムホスフェート(CPP-ACP)含有ペーストや各種濃度のフッ化ナトリウム溶液は、抑制効果があることが示され、この評価に、牛歯変色歯モデルは有用であった。漂白前後の歯の測色値から、歯の本来の色調および歯の漂白効果には個人差が大きく、それらに影響を及ぼす要因を明確にすることはできなかった。歯の変色や漂白効果に及ぼす因子を明らかにすることが予知性の高い漂白法を確立するために重要であり、また、それを反映した変色歯モデルの改良が今後必要と思われる。以上から、本課題によって確立した牛歯変色歯モデルは、今後、歯の漂白材・漂白法の評価に役立つものと思われる。
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