研究概要 |
象牙質・歯髄複合体の修復再生過程における歯髄細胞,特に歯髄組織幹細胞/前駆細胞の動態,分化ならびに硬組織形成機構の解明を目的として,ラット臼歯歯髄における半導体レーザー照射後の非コラーゲン性タンパク遺伝子発現を観察するとともに,幹細胞/前駆細胞マーカーのラット歯髄における局在性について免疫組織化学的観察を行った。 1.半導体レーザー照射後のラット臼歯歯髄における非コラーゲン性タンパク遺伝子発現 8週齢ラットの上顎第一臼歯に,出力1.5W,60秒×3回照射の条件で半導体レーザー照射を行い,非コラーゲン性タンパク(dentin sialophosphoprotein,bone sialoprotein,dentin matrix protein-1,osteopontin,osteonectin,osteocalcin)のmRNA発現をRT-PCR法にて観察した。その結果,全てのmRNA発現が3日後までに増加を示し,象牙芽細胞様細胞の再配列の観察される7日後も発現亢進が持続して認められた。新生硬組織形成細胞の分化過程に非コラーゲン性タンパクの発現が関連していることが示唆された。 2.ラット歯髄におけるThy-1(CDw90)陽性細胞の局在 幹細胞/前駆細胞マーカーの1つThy-1(CDw90)に着目し,ラット下顎切歯および臼歯における局在を免疫組織化学的に観察した。その結果,Thy-1の免疫局在は鐘状期以降のsubodontoblastic layerで強い陽性反応を示したが,象牙芽細胞およびその他の歯髄細胞では陰性であった。歯髄傷害後の象牙質・歯髄複合体の修復再生過程にThy-1陽性細胞が関連している可能性が示唆され,今後,組織培養系におけるこれら細胞の動態について検討を加える予定である。
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