研究概要 |
平成21年度は,歯科治療において覆髄剤として広く用いられている水酸化カルシウムの硬組織石灰化誘導に対する効果について解析を行った。解析の結果,水酸化カルシウムから溶出したカルシウムイオンが硬組織産生細胞に働き,その石灰化を亢進させることが明らかとなった。そして,その効果は、カルシウムセンシングレセプターの下流に存在するERK1/2,p38,JNKといった分化シグナルの活性化を増強することによることが明らかとなった。本研究課題は,積極的に象牙質再生能を誘導しうる覆髄剤(材)を開発することであり,この研究成果は本研究課題において非常に重要な意義をもつ。一方で,これまでにin vivoにおいて雄性9週Wistarラットの臼歯に対して実験的窩洞形成を行い,歯髄における遺伝子発現についてマイクロアレイ法を用いた経時的な解析を行ってきた。その結果,MMPファミリー分子(MMP-3,MMP-13,TIMP-1)の発現が継続的に上昇していることを発見した。次に,MMPファミリー分子の遺伝子発現と局在についてin situ hybridization法にて解析を行うために各遺伝子の全長cDNAよりprobeの作製を行った。発現上昇の確認された遺伝子の中の一つであるTIMP-1のprobeを川いて上記ラットの頭蓋骨に対して染色を行ったところ,頭蓋骨表面の細胞である骨芽細胞においてシグナルの発現が確認された。骨芽細胞と象牙芽細胞における発現遺伝子の類似性については以前より多数報告があることから,象牙芽細胞においてもTIMP-1が発現している可能性は高いものと考えられる。現在,実験的窩洞形成を行った上記ラットの臼歯に対して各遺伝子の発現と局在の解析を進めているところである。さらにin vitroにおいて象牙芽細胞様細胞(MDPC-23)を用いて,石灰化誘導培地におけるMMPファミリー分子の発現について解析し,石灰化とMMPファミリー分子の相関性についてReal-time PCR法を用いて解析を進めているところである。
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